先日、我が家にアパートの管理会社から「家賃改定通知書」が届きました。
内容は「契約更新時に家賃を3000円、共益費を500円、計3500円上げるので、同意書に捺印して返送してください」とのこと。
急激なインフレで食費や日用品の価格が上がって家計が苦しくなっている昨今ですが、いよいよ家賃にまで影響が出てきました。
とはいえ家計の中で最大の固定費である家賃が上がるのはさすがに影響が大きい…
どうにかして避ける方法は無いのでしょうか?
結論から言うと、賃貸アパートの家賃改定は入居者側が拒否することができます。
今回は、私が実際にアパートの家賃改定を拒否して家賃を据え置きにしてもらった体験談を交えながら家賃改定を拒否する具体的な方法とその注意点について解説します。
拒否する上での注意点も解説しますので、ぜひ最後まで読んでいただけると嬉しいです。
家賃改定を拒否できる理由
家賃の改定には貸主と借主の双方の合意が必要だから
管理会社から我が家に届いた書面を要約すると、以下のような内容でした。
ご入居いただいているお部屋の賃貸借契約について、次回の更新時から下記の条件で賃料等の改定をさせていただきたく、ご案内申し上げます。
今回の賃料改定は、賃貸住宅の経営に係る経済情勢の変動、及び昨今の市場における物価上昇に伴い、賃料等の改定をお願いするものでございます。
つきましては、次回更新時に改定後の賃料等を記載した契約更新書類をお送りいたしますので、ご記名・ご捺印の上、ご返送いただければと存じます。
家賃:3000円増
共益費:500円増
この内容、お願いベースの文面とはいえいかにも家賃が上がることが確定しているかのようにも解釈できる書きぶりです。
しかし、実はこの時点ではあくまで大家さんや管理会社側が「家賃上げてもいいですか?」と入居者である私たちに打診している段階に過ぎないのです。
家賃は入居者の同意なしで、大家さんや管理会社の判断で勝手に上げることはできません。
家賃を上げることができるのは、①家賃を上げる正当な理由があり、②貸主と借主お互いの合意が成立した場合に限るので、入居者側には家賃改定を拒否したり金額を交渉する余地があるのです。
賃料改定が生じるのはどんな時?
「借地借家法」で定められている条件を満たす場合のみ家賃を改定できる
いくら大家さんといえど、好き勝手に家賃を変えられるわけではありません。
家賃を変更することができる場合については「借地借家法」の第32条1項にてきちんと定められています。
(借賃増減請求権)
引用元:借地借家法
第三十二条 建物の借賃が、土地若しくは建物に対する租税その他の負担の増減により、土地若しくは建物の価格の上昇若しくは低下その他の経済事情の変動により、又は近傍同種の建物の借賃に比較して不相当となったときは、契約の条件にかかわらず、当事者は、将来に向かって建物の借賃の額の増減を請求することができる。ただし、一定の期間建物の借賃を増額しない旨の特約がある場合には、その定めに従う。
要約すると、おおよそ以下のような時に家賃改定を掛けることが出来るわけです。
- 地価や建物価格の上昇で不動産の税金負担が上がった場合
- 物価が上がった場合
- 周辺の家賃相場と合わなくなった場合
このように大家さん側の経済的負担が大きくなった場合に限り、家賃を上げることが出来るのです。
もし大家さんが勝手に家賃を上げられるのであれば、大家さんが家賃を吊り上げることで気に入らない入居者を立ち退かせることが出来るようになってしまいます。
住居というのは人々の生活とってに重要なものであるため、借りる側の立場を守るためにこのように法律で保護されているわけです。
裏を返せば、もし借りているアパートの家賃が周辺の相場より高い場合には、入居者が家賃を下げる請求をすることもできるということです。
大家さんは税負担の増加や物価の上昇など、正当な理由がある場合にしか家賃を変更できない
私の物件の場合、賃料改定は妥当なのか?
賃料改定の連絡を受けて、私は賃料改定の妥当性を検証すべくいくつかの項目について調べてみることにしました。
管理会社からの通知書類には賃料改定の理由として「賃貸住宅の経営に係る経済情勢の変動、及び昨今の市場における物価上昇」が挙げられていました。
(ほかに何も具体的な説明も書いてなかったので、これだけの説明で家賃改定に同意しろというほうが無理があります…)
なのでこれらに関する指標について、本当に家賃を上げるのが妥当と判断できるような状況なのかを確認しました。
アパート周辺の地価(路線価)
アパート周囲の地価(路線価)を調べてみました。
参考にしたのは「全国地価マップ」というサイトで、日本全国の地価について調べることが出来ます。
自宅の特定を避けるため具体的な価格は掲載できませんが、私のアパートがある場所の路線価は令和元年から令和4年までの間に約8.6%上昇していることが分かりました。
なので土地の価格の上昇により、大家さんは固定資産税の負担が増えたのではないかと推察できます。
物価上昇率
最近は新型コロナやロシア・ウクライナ間の戦争により物流が不安定となり、あらゆる物価が上昇しています。
具体的にどのくらい物価が上昇しているのかを確認するために、「消費者物価指数」(CPI)について調べてみました。
CPIは総務省統計局のサイトから確認することができます。
2020年基準 消費者物価指数 全国 2023年(令和5年)4月分(2023年5月19日公表)
(1) 総合指数は2020年を100として105.1
引用元:総務省統計局(2023年05月19日時点のデータ)
前年同月比は3.5%の上昇
(2) 生鮮食品を除く総合指数は104.8
前年同月比は3.4%の上昇
(3) 生鮮食品及びエネルギーを除く総合指数は104.0
前年同月比は4.1%の上昇
データによると、CPIは2020年を基準とすると約5%上昇していることが分かります。
このことから、インフレにより大家さんの不動産運営の経費が増加している背景が推察できます。
周辺の家賃相場
私のアパート周辺の家賃相場について調べてみました。
今回はSUUMOを使って、周辺のアパートで似た間取り、広さの物件の家賃を確認してみました。
あまり空き部屋が無く、調査対象が少なかったのですが、正直なところ私の部屋の家賃は周辺相場よりもやや低いような印象でした。
私のアパートは住み始めた頃には周辺相場よりもやや家賃が高めの部類だったのですが、入居後の地価上昇とインフレにより、周辺の物件と家賃相場が逆転したものと考えられます。
家賃上昇はおそらく妥当な水準
地価・物価の上昇率と、我が家の家賃の上昇率を考慮すると、管理会社から打診された賃料改定は正直「妥当な水準」かなと感じました。
実際のところ、私たちの家賃は周囲の状況に対してけっこうお得な価格になっているように感じます。
しかしながら、管理会社や大家さん側が事前にこういったデータを把握したうえで賃料改定の内容を決定しているはずなので、これらのデータを入居者に開示しないまま一方的に賃料改定をお願いするのはあまりに不公平であることも事実です。
家賃改定の拒否を連絡
家賃改定の内容がおそらく妥当であることは分かりました。
しかしこれはあくまで私が個人的に収集した情報であり、本来はこういった情報に明るい管理会社や大家さん側が説明する責任があると思います。
なので私は管理会社の問い合わせフォームに以下のようなメッセージを送りました。
ご担当者さま
賃料改定についてのお知らせが届きましたが、当該書面では賃料改定の具体的な理由が分からないため、家賃据え置きでの更新をお願いしたく考えています。
恐れ入りますが参考のために賃料改定の根拠が分かる資料やデータ、貸主さまの固定資産税の負担増などの背景があれば教えていただけますでしょうか。
私自身、賃料上げの内容の妥当性も感じていたため、もしもここで管理会社側から上記データのような説明がきちんとあれば、賃料改定をある程度受け入れるつもりでした。
管理会社側からの回答
メッセージを送った翌日、管理会社から返信がありました。
(管理会社担当者)
今回の条件変更に関して同意できないとのご連絡をいただき、協議の結果、従前条件での据置とさせていただきます。
なんと、あっさりと家賃据え置きを受け入れてくれました。
正直かなり拍子抜けしてしまいました。
管理会社としても、変に賃料改定で揉めて入居者との関係性を悪化させたくないということなのでしょうか。
こうして、我が家の賃料改定の話は帳消しとなり幕を閉じたのです。
賃料改定を拒否する場合の注意点
今回の私の場合は特に問題なく賃料改定を拒否することが出来ましたが、拒否するうえでいくつか注意した方が良い点があります。
最後にそれら注意点について解説します。
大家さん、管理会社との関係悪化に注意する
いくら入居者に賃料改定を拒否する権利があるからといって、賃料改定は大家さん側にも正当な理由があって行われるものです。
なので連絡を無視したり、話も聞かずに頑なに拒否し続けた場合には大家さんや管理会社との関係性が悪化してしまうリスクがあります。
賃料が据え置きになっても、関係性が悪化してしまうとその後の住み心地や会ったときの空気感にも影響しますので、賃料改定の交渉においては常に礼儀正しく振舞いましょう。
賃料改定を拒否する場合であっても、相手の事情や背景をくみ取ったり、歩み寄る姿勢が大切です。
家賃を受け取ってもらえない場合は供託所を利用する
いくら家賃の値上げが不満だからと、家賃を一切支払わないという行動はダメです。
なぜなら、家賃滞納を理由に退去させられる可能性が高いからです。
また場合によっては、大家が家賃を受け取ってくれない場合もあります。
その場合は、物件の地域の供託所(法務局や地方法務局など)に家賃を預けることで、家賃をちゃんと支払ったという扱いになります。
供託制度を利用することで、家賃滞納など入居者が一方的に不利になるような状況が避けられるので覚えておくとよいです。
以上、賃料改定の拒否についての解説でした!
昨今のインフレで家賃があがる物件が増えていますが、交渉の余地が十分あることを知ってもらえると幸いです!
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