グラフィックボードのドライバーをクリーンインストールするために、DDU(Display Driver Uninstaller)を使おうとしたときのこと。
セーフモードでの実行が推奨されているので、セーフモードに入ろうとしたのですが、想定外の壁にぶつかりました。
案内に従って再設定を試みても何も起きず、パスワードログインに切り替えてもログインできない・・・
要するにセーフモードに入ること自体ができない状態になってしまったのです。
これ、調べてみると同様のトラブルで苦しんでいる人が結構いるようでした。
セーフモードは、トラブル時の原因切り分けや復旧に役立つ大切な機能…
それなのに「ログインすらできない」というのは控えめにいっても超ストレスでした。
この記事では、Windows11(24H2)でセーフモード時にPINが使えなくなる問題について、
筆者自身が体験した症状と、最終的に突破できた方法をわかりやすくまとめていきます。
発生環境と症状
今回発生したのは、セーフモード起動時にPINが使えなくなり、ログインできなくなるというトラブルです。
実際に表示されたメッセージは以下の通りでした。
案内に従って「暗証番号(PIN)をセットアップする」をクリックしても、別ウィンドウが一瞬表示されるだけで、再設定できず…
さらに「サインインオプション」からパスワードに切り替えても、セーフモードではネットワークに接続されていないためか、Microsoftアカウントの認証が通らず、結局ログインできませんでした。
筆者の環境は以下の通りです。
- OS: Windows 11 Home(24H2)
- サインイン方式: Microsoftアカウント(PINでログイン)
- セーフモードの起動方法: Shift+再起動 → トラブルシューティング → セーフモード起動
再起動すれば通常モードには戻れるためPCが完全に使えなくなるわけではないのですが、本来セーフモードで行いたかった作業(今回の場合はDDUでのドライバー削除)ができず、対応が進まない状態に陥りました。
試したけどダメだった対処法
いろいろ調べながらいくつかの方法を試してみました。
再起動して再度セーフモードに入る
まずは単純に、何度か再起動してセーフモードに入り直すことを試みました。
一時的な読み込みミスかもしれないという期待もありましたが、状況は変わらず、PIN入力エラーのまま進展なし。
「Windows Hello の要求」をオフにする
次に、Windows設定からWindows Hello に関する要求を無効化してみました。
PINの利用制限が影響しているのかと考えたのですが、これも効果はありませんでした。
PINを削除し、パスワードログインに切り替える
次に行ったのは、通常モードでPIN設定を削除し、Microsoftアカウントのパスワードでのログインに切り替えるという方法。
PIN依存の問題を回避できるかも考えたのですが…
おそらくセーフモードではネットワーク接続が無効になっているため、Microsoftアカウントのパスワード認証が通らず、結局ログインできませんでした。
パッと試せることはだいたい試しましたが、どれも解決には至らず。
一時はローカルアカウントへの切り替えも検討しましたが、Windows11ではMicrosoftアカウントを前提とした設計が多く、運用の手間を考えていったん保留しました。
行き詰まった中でRedditなど海外フォーラムを調べていくうちに、ある方法にたどり着きます。
次のセクションでは、実際に筆者が突破できた手順について詳しく紹介します。
最終的に突破できた方法
いろいろな手段を試しても解決しなかったこの問題。
行き詰まりつつも、Redditなど海外のフォーラムを調べていく中で、TPM(Trusted Platform Module)関連の設定を見直すことで突破できたという報告をいくつか見かけました。
そこで、実際に以下の手順を試してみたところ、筆者の環境では無事セーフモードに入ることができました。
✅ TPM設定を一時的にOFFにする
Windowsの設定からPINを削除し、「Windows Helloの要求」と「BitLocker」を一時的に無効化しておきます。

マザーボードによって表記は異なりますが、TPM関連のセキュリティ機能を一度無効にします。
※TPMのクリア(Clear)」など初期化に関わる項目は絶対に選ばないように注意。
以下、ASUS製マザーボードでの操作です。
PC再起動時にF2もしくはDELキーを押してBIOS画面に入ります。
詳細(Advance)モードに切り替えて、「詳細」タブの「Trusted Computing」に入ります。

「セキュリティデバイスサポート」が有効になっているため、これを「無効(Disable)」にする

この状態で再起動し、Windows設定からPINを再度登録します。
先ほど無効にしたTPM関連の設定を元に戻します。
ここで一度通常モードを経由し、改めてセーフモードで再起動すると──
PINによるログインが正常に動作するようになっていました。
あとは最初に無効化していたWindows HelloやBitLockerなどの設定を元に戻せば完了です。
なぜこの方法で突破できたのか推察
TPM(Trusted Platform Module)はパソコン内にある「秘密を守る金庫」のようなセキュリティ用チップ。
- 暗号化キー(復号パスワード)や生体認証データなどを安全に保管
- 起動時にOSが改ざんされていないかをチェックする
- BitLocker(ドライブ暗号化)やWindows Hello(PINや顔認証)などと連携する
TPMはPINやBitLockerといったセキュリティ機能と深く関わっていますが、機能が制限されるセーフモードではTPMがうまく動作せず、PIN認証に必要な情報が取得できなくなるケースがあるのかなと…
普通に困るバグなのでMicrosoftさん早く治してくれ…
注意点とリスクについて
今回紹介した手順は筆者の環境では有効でしたが、TPMやWindows Helloといったセキュリティ機能に関わる操作が含まれるため、いくつか注意しておきたいポイントがあります。
TPMを無効にすることの影響
TPMを無効化すると以下のような影響が出る可能性があるため注意が必要です。
- BitLockerが一時的に無効になる/復号できなくなる
- データドライブにBitLockerを使っている場合は、回復キーを事前にバックアップしておくことを強くおすすめします。
- データドライブにBitLockerを使っている場合は、回復キーを事前にバックアップしておくことを強くおすすめします。
- Windows Hello(PINや顔認証)の設定がリセットされる
- TPMと連携しているPINは、TPMの設定変更によって無効になることがあるかもしれません。
- 前述の方法ではWindows HelloをOFFにして、一度PINを削除→再設定するため、特に影響はないと思います。
絶対にやってはいけない操作:「Clear TPM」
BIOS設定の中には「TPMのクリア(Clear TPM)」や「Reset to Factory Defaults」といった項目がありますが、
これを選択するとTPM内のすべてのデータが初期化されてしまいます。
- BitLockerの暗号化キーや、TPMに保存されていた証明書・認証情報が消える可能性あり
- 復旧が困難になるケースもあるため、TPMの無効化はしても“クリア”は絶対に避けてください
実際に試す際のポイントまとめ
項目 | 注意点 |
---|---|
BitLocker使用中 | 回復キーを必ずバックアップしておく |
TPMの設定変更 | 「無効化・有効化」のみを行い、「クリア」は避ける |
PIN再設定後 | 通常モード・セーフモードの両方でログインできるか確認する |
不安な場合 | BIOS設定を変更する前に、バックアップを取っておくと安心 |
このあたりを押さえておけば、必要以上に不安になることはないと思います。
ただし環境や構成によって動作が異なる可能性もあるため、操作の誤りに注意して慎重に進めてください。
まとめ
今回のトラブルはちょっと手こずりましたが、なんとか突破して、無事にセーフモードに入ることができました。
グラボのドライバーも予定通りクリーンインストールできたので安心です。
最近メインPCをいじり回す機会も多く、これからセーフモードを使う機会はきっと増えると思うため、今回の件はいい経験になりました。
同じようなトラブルに直面している方の参考になればうれしいです!