私のメインPCではIntel Corei7-12700Kを使っているのですが、12~14世代のCoreシリーズでユーザーから指摘されているのが「CPUの反り問題」
簡単に言うとCPUを正しい方法で取り付けているのに、CPUが反ってしまって結果的にCPUの冷却性能が落ちるという可能性が示唆されているわけです。
私の今のところCPUが爆熱になるような事案は起きていませんが、熱による性能低下や劣化は嬉しくないので、懸念事項は早めにつぶしておきたいところ。
そこで今回は「反り防止フレーム(コンタクトフレーム)」を導入して、CPU温度に変化があるのかを調べてみます。

私は…保証を捨てる…!
LGA1700の「CPU反り問題」とは
本題に入る前にIntel CPUの反り問題について解説しておきます。
Intelの第12世代CPU、通称「Alder Lake」以降で採用されたLGA1700ソケットでは、正しい方法でマザーボードに取り付けてもCPUが反ってしまう現象が確認されています。
これはIntel製CPUの形状が、12世代以降で長方形になりサイズが大きくなったことに由来します。
ILM(CPUの固定金具)で締め付けた時の圧力が中央に集中してCPUがたわんでしまうわけです。
これによりCPUクーラーとの接触が甘くなってCPU冷却性能が低下することが懸念されています。

冷却効率が低下するとCPU温度が通常よりも高くなり、熱による性能低下(サーマルスロットリング)や冷却ファンの動作音が大きくなるなど、良いことは全くありません。
ちなみに最新のソケット規格であるLGA1851ではILMが改善されたため反り問題はある程度改善しているらしいので、最新のCore Ultraシリーズはあまり気にしなくてよさそう。
(完全には解決していないそうですが…)
LGA1700規格は今でもゲーミングPCで人気のCPUなので、2025年現在でも愛用している人も多いと思います。
そのためもし「なんかCPUがちゃんと冷えてない気がする…」といったことを感じた場合は、CPUの反りが一つの原因かもしれません。
商品紹介
今回購入したのはThermalright(サーマルライト)製の反り防止フレーム「LGA 17XX-BCF」

CPUの2点を押さえつける純正ILMと違い、CPU全体を包み込むように固定するためCPUを均等に固定できます。
内容物はフレームと簡単な図解、ILM取り外し用の星形レンチ、サーマルグリスです。

ThermalrightはCPUクーラーをはじめこういったアクセサリをいろいろ販売しているメーカー。
安価で手軽に買えるものが多いので、私も自作PCでは時折お世話になっています。

反り防止フレーム使用時の注意点
Thermalright製をはじめとする反り防止フレームを使うためには、標準のILMを取り外す必要があります。
これはマザーボードの改造にあたり、CPUやマザーボードの保証が切れる可能性が高いため注意してください。
PCの組み立てや自作にある程度慣れている人向けのパーツと言えるため、反り防止フレームの使用を推奨する意図がないことはあらかじめご理解ください。
検証結果
反り防止フレームの効果を検証するため、フレーム交換前後でCPU温度の変化を観察しました。
検証環境は以下の通り
- CPU…Intel Core i7-12700K
- CPUクーラー…DEEP COOL AK400
- CPUファン回転数…自動
- CPUグリス…ARCTIC MX6
- 室温…25℃で一定
- 検証方法…Cinebench R23 マルチコア10分
厳密にはCPUファンの回転数も固定するのがベターなのでしょうが、できるだけ常用している条件で検証したほうが現実的と思い自動のままにしています。
どうせCinebench回せばほぼ最大回転になりますしね。
フレーム交換前のCPU温度
フレームを交換する前にCPUが本当に反っているのかを確認してみましたが、目視では全く分かりませんでした。
一応定規などを沿わせて後ろから光を当てて隙間が無いかなども見てみたのですが、「明らかに隙間がある!」といったことは確認できず…
まぁ隙間と言ってもコンマ何ミリというオーダーだと思うので、目視で分かる程度のものではなさそうです。
しかし計算上はコンマ数ミリの隙間でも、CPUグリスの厚みが変わることでCPU温度には有意差が出る可能性が高いことは、先日熱工学的な計算から確認済み…
やはり冷却性能低下につながる要素は排除したいところです。
フレーム交換前の純正ILMを使用した状態では、CPU温度はこんな感じでした。
温度はCore Tempでモニタリングし、CSVで記録後に集計しています。

- アイドル時温度:31〜38℃
- Cinebench R23実行時の最高温度:92℃
- 平均温度:83.7℃
- 平均消費電力:194W
- Cienebenchスコア:20849
Core i7-12700KのMTP(最大消費電力)は190Wなのできちんと最大性能を発揮してくれたと言えます。

てか190Wをちゃんと冷やせてるAK400優秀すぎんか?
フレーム交換作業
CPU反りフレームの交換作業はそう難しくありませんが、基板やCPUを傷つけないよう慎重に行いましょう。
指先からパチッと静電気が飛ぶとマザーボーやCPUが故障する可能性もあるため、手を洗ったり金属を触るなどして体から放電してから作業するのがおすすめ。
まずはCPUクーラーを取り外してCPUを露出させます。

付属の星形レンチでILMのねじを緩めて取り外します。
ネジは固くないので簡単に回ります。
ネジを全て外すとマザーボード裏側にあるバックプレートが外れるので、予めテープなどで留めておくか、手で押さえておくといいかもしれません。

ILMを取り外します。
この時、CPUがソケットから落ちないよう気を付けましょう。

CPUの上から反り防止フレームをスポッとかぶせ、ILMのねじを4か所締めたら完了です。
ネジは対角線の順番で締めると4か所の圧力が均等になります。


あとはCPUクーラーを取り付けなおしたら完了
フレーム交換後のCPU温度
Thermalrightの反り防止フレームを取り付けた後、再度同じ条件で計測を実施。
- アイドル時温度:27〜34℃
- Cinebench R23実行時の最高温度:91℃
- 平均温度:83.8℃
- 平均消費電力:192W
- Cienebenchスコア:20626
考察
交換前後の数値を比較してみましょう。
交換前 | 交換後 | |
---|---|---|
アイドル時温度 | 31~38℃ | 27~34℃ |
Cinebench R23実行時の最高温度 | 92℃ | 91℃ |
平均温度 | 83.7℃ | 83.8℃ |
平均消費電力 | 194W | 192W |
Cienebenchスコア | 20849 | 20626 |
ぶっちゃけ、あんまり変化はないです。
一応アイドル時の温度は下がってそうに見えますが、CPUの稼働率を厳密にコントロールできているわけではないのでフレームを交換したおかげかと言われると微妙なところ。
Cinebench中の最高温度に大して変化がないので、少なくとも私のPCにおいては冷却性能の改善は無いと言えるでしょう。
しかしこのフレーム交換が無意味だったとは思っていません。
今回のCPUを使い始めたのは約3か月前。
まだ使用開始から日が浅く、そもそもCPUの反りが小さかった可能性もあります。
そのまま放置しておくと時間経過で反りが悪化した可能性もゼロではないため、この機会に対策できたと考えてもいいかもしれません。
「CPU反り問題でPCが本来の性能を出せていないのでは?」と心配する必要がなくなったので、これから気持ちよくPCを使っていくためにも有意義な検証だったと思います。
まとめ:あまり気にしなくてよさそう
今回はCPU反り防止フレームを使ってCPU反り問題について検証しました。
私のPCでは明確な変化は確認されず、個人的な感想としてはそれほど神経質にならなくてもいいんじゃないかなといった感じです。
少なくとも、最新の爆熱CPUをフル稼働させることなんてベンチマーカーくらいしかいないため、一般的なゲーミングPCなどでは大した問題にはならないと思います。
CPUやマザーボードの保証が切れることもあり推奨することはしませんが、より自分のPCを最適化したい人は検討してみてもいいかもしれません。
